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歯が欠けて痛くない!でも変色してきたら?
歯が欠けた当初は痛みを感じなかったものの、しばらくしてから歯の色が徐々に変わってきた(例えば、灰色っぽく、あるいは茶色っぽく変色してきた)という場合、それは歯の内部で何らかの変化が起きているサインかもしれません。このようなケースでは、特に注意が必要です。歯が欠けた際に痛みを感じなくても、その衝撃や、欠けた部分からの細菌の侵入などによって、歯の神経(歯髄)がダメージを受けている可能性があります。歯髄がダメージを受けると、炎症を起こしたり(歯髄炎)、徐々に壊死(死んでしまうこと)したりすることがあります。歯髄が死んでしまうと、歯に栄養を供給していた血管も機能しなくなるため、歯の組織が変性し、時間の経過とともに歯が内側から変色してくるのです。具体的には、死んでしまった歯髄組織の分解産物や、歯髄内での出血によって生じた血液成分(ヘモグロビンが分解されたものなど)が、象牙質の微細な管(象牙細管)に入り込み、沈着することで、歯が灰色っぽく、あるいは暗褐色、黒っぽい色調に変化していきます。この変色は、通常、数週間から数ヶ月、あるいは数年かけてゆっくりと進行することが多いです。重要なのは、歯髄が死んでしまうと、歯は痛みを感じる能力を失うということです。そのため、変色が進行している間も、痛みという自覚症状が現れないことがほとんどです。しかし、痛みがないからといって放置しておくと、死んだ歯髄組織が細菌の温床となり、歯の根の先で感染が広がり、膿が溜まったり(根尖性歯周炎)、歯ぐきが腫れたりする可能性があります。また、神経が死んだ歯はもろくなり、割れやすくなるというリスクもあります。したがって、歯が欠けて痛みがなかったとしても、その後に歯の色が変化してきた場合は、歯の神経が死んでいる可能性が高いと考えられます。速やかに歯科医院を受診し、レントゲン検査などで歯の状態を詳しく調べてもらい、適切な治療(多くの場合、根管治療が必要になります)を受けるようにしましょう。早期に治療を開始することで、感染の拡大を防ぎ、歯を長持ちさせることができます。