差し歯をできるだけ長く、快適に使い続けるためには、日々の適切な口腔ケアが欠かせません。差し歯自体は人工物なので虫歯にはなりませんが、差し歯を支えている土台の歯(歯根)や、周囲の歯茎は、天然歯と同様に虫歯や歯周病のリスクにさらされています。これらのトラブルを防ぐことが、差し歯の寿命を延ばすための最も重要なポイントとなります。まず、基本となるのは毎日の丁寧な歯磨きです。特に、差し歯と歯茎の境目、そして差し歯と隣の歯の間は、歯垢(プラーク)が非常に残りやすい場所です。歯ブラシの毛先を歯と歯茎の境目に45度くらいの角度で当て、軽い力で小刻みに動かしながら、汚れをかき出すように磨きましょう。差し歯の裏側も忘れずに丁寧に磨くことが大切です。歯ブラシだけでは、歯と歯の間の汚れを完全に取り除くことは困難です。そのため、デンタルフロスや歯間ブラシを必ず併用するようにしましょう。デンタルフロスは、差し歯と隣の歯の間に通し、歯の側面に沿わせるようにして上下に動かし、歯垢をからめ取ります。歯間ブラシは、歯と歯の間の隙間の大きさに合ったサイズを選び、無理なく挿入して数回往復させます。これらの補助清掃用具を正しく使うことで、歯垢の除去率を大幅に向上させることができます。歯磨き粉の選び方にも注意が必要です。研磨剤が多く含まれている歯磨き粉を使いすぎると、差し歯の表面(特にレジン製のもの)を傷つけてしまう可能性があります。低研磨性やジェルタイプの歯磨き粉を選ぶか、あるいは研磨剤の少ないものを少量使うように心がけましょう。また、食生活にも気を配ることが大切です。甘いものや炭水化物の摂取回数が多いと、虫歯のリスクが高まります。だらだら食べをせず、規則正しい食生活を送りましょう。硬すぎるものを頻繁に噛むのも、差し歯や土台の歯に負担をかけるため避けるべきです。喫煙は、歯周病を悪化させる最大の要因の一つであり、差し歯の寿命にも悪影響を与えます。禁煙を心がけることが望ましいです。そして、これらのセルフケアに加えて、歯科医院での定期的なメンテナンスが非常に重要です。歯科医師や歯科衛生士による専門的なクリーニングでは、自分では落としきれない歯垢や歯石を除去してもらえるだけでなく、差し歯の状態、噛み合わせ、土台の歯の健康状態などをチェックしてもらい、早期に問題を発見し対処することができます。
差し歯を長持ちさせるための日常ケア