毎日の歯磨きで、歯ブラシが歯や歯ぐきに当たると痛みを感じる場合、その原因の一つとして「歯ブラシの圧が強すぎること(ブラッシング圧過多)」が考えられます。良かれと思って力を入れてゴシゴシ磨いていると、かえって歯や歯ぐきを傷つけてしまい、様々なトラブルを引き起こす可能性があります。歯ブラシの圧が強すぎると、まず歯の表面のエナメル質が摩耗しやすくなります。エナメル質が削れて薄くなると、その下にある象牙質が露出し、知覚過敏を引き起こし、歯ブラシの刺激や冷たいものでしみたり、痛みを感じたりするようになります。また、歯ぐきにもダメージを与えます。強い力で歯ぐきを擦ると、歯ぐきが傷ついたり、炎症を起こしたりして、歯ブラシが当たると痛みを感じるようになります。さらに、長期間にわたって強い圧で磨き続けると、歯ぐきが徐々に下がってしまい(歯肉退縮)、歯の根元が露出する原因にもなります。歯の根元はエナメル質で覆われていないため、刺激に弱く、知覚過敏や根面う蝕(歯の根元にできる虫歯)のリスクが高まります。歯ブラシの圧が強すぎるかどうかをセルフチェックする方法としては、まず歯ブラシの毛先の状態を確認してみましょう。歯ブラシを使い始めて1ヶ月も経たないうちに毛先が大きく開いてしまう場合は、力が入りすぎている可能性が高いです。また、歯磨き後に歯ぐきがヒリヒリしたり、赤くなっていたりする場合も、ブラッシング圧が強すぎるサインかもしれません。適切なブラッシング圧は、一般的に100g~200g程度と言われており、歯ブラシの毛先が歯や歯ぐきに軽く触れる程度で十分です。これは、歯ブラシを鉛筆のように持つ「ペングリップ」で磨くことで、自然と力が入りすぎるのを防ぐことができます。また、力を入れなくてもプラーク(歯垢)を効果的に除去できる「電動歯ブラシ」を使用するのも一つの方法です。最近の電動歯ブラシには、圧力が強すぎると知らせてくれる機能が付いているものもあります。もし、自分で力のコントロールが難しいと感じる場合は、歯科医院で歯科医師や歯科衛生士に正しい歯磨き方法の指導(ブラッシング指導)を受けることをお勧めします。適切なブラッシング圧を身につけることで、歯ブラシによる痛みを防ぎ、歯と歯ぐきの健康を守ることができます。