歯ぎしりや食いしばりは、無意識のうちに行われることが多いため、本人も気づいていないケースが少なくありません。しかし、これらの口腔内の悪習慣は、歯や顎、さらには全身にも様々な悪影響を及ぼす可能性があります。どのような問題が起こり得るのかを理解しておくことは、歯ぎしりの治し方を考える上で非常に重要です。まず、最も直接的な影響を受けるのが「歯」そのものです。歯ぎしりや食いしばりによって、歯と歯が強くこすり合わされたり、強い圧力がかかったりすることで、歯の表面のエナメル質が徐々に摩耗していきます(咬耗)。これにより、歯が短くなったり、平らになったり、象牙質が露出して冷たいものがしみやすくなったり(知覚過敏)します。また、歯に微細な亀裂(マイクロクラック)が生じたり、時には歯が欠けたり、割れたり(歯の破折)することもあります。特に、神経のない歯や、大きな詰め物・被せ物をしている歯は、より破折しやすい傾向があります。次に、「歯周組織への影響」も深刻です。歯ぎしりによって歯に過度な力がかかると、歯を支えている歯周組織(歯ぐき、歯根膜、歯槽骨)にも大きな負担がかかります。これにより、歯周病が既に進行している場合はその悪化を早めたり、歯がグラグラと動揺しやすくなったりすることがあります。また、「顎関節への影響」も無視できません。歯ぎしりや食いしばりは、顎の関節(顎関節)や、顎を動かす筋肉(咀嚼筋)に過度な負担をかけるため、「顎関節症」を引き起こす原因の一つとなります。顎関節症になると、口を開け閉めする際に顎が痛んだり、カクカクと音がしたり、口が開きにくくなったりといった症状が現れます。さらに、歯ぎしりによる筋肉の緊張は、「頭痛」や「肩こり」、「首こり」といった全身症状を引き起こすこともあります。特に、朝起きた時に顎が疲れていたり、こめかみ辺りに痛みを感じたりする場合は、睡眠中の歯ぎしりが原因である可能性が高いです。このように、歯ぎしりは口腔内だけでなく、全身の健康にも悪影響を及ぼす可能性があるため、放置せずに適切な対処を検討することが大切です。
歯ぎしりがもたらす悪影響とは?