歯が欠ける原因として最も代表的なものが「虫歯」です。虫歯は、初期の段階では自覚症状がないことが多いですが、進行すると歯の構造を破壊し、最終的には歯が欠けたり折れたりする事態を招きます。では、なぜ虫歯になると歯が欠けやすくなるのでしょうか。そのメカニズムを理解することで、虫歯予防の重要性も再認識できるはずです。虫歯は、お口の中にいる虫歯菌(主にミュータンス菌)が、食べ物に含まれる糖分を分解して酸を作り出し、その酸によって歯の表面(エナメル質)が溶かされてしまう病気です(脱灰)。虫歯が進行し、エナメル質の内側にある象牙質まで達すると、象牙質はエナメル質よりも柔らかく、酸に溶けやすいため、虫歯の進行が早まります。この時、歯の表面からは小さな穴にしか見えなくても、内部では象牙質が広範囲にわたって溶かされ、空洞が形成されていることがあります。いわゆる「トンネル状の虫歯」と呼ばれる状態です。このように、歯の内部が虫歯によってスカスカになってしまうと、歯の外側のエナメル質だけが薄く残っているような状態になります。エナメル質は硬い組織ですが、それを支える内部の象牙質が失われてしまうと、その強度は著しく低下します。その結果、食事中に硬いものを噛んだり、あるいは日常的な噛み合わせの力によっても、薄くなったエナメル質が耐えきれずに「パキッ」と割れてしまったり、ポロッと欠けてしまったりするのです。特に、奥歯の溝(裂溝)や、歯と歯の間など、見えにくい部分で虫歯が進行している場合、自覚症状がないまま内部で大きく広がり、ある日突然、歯が大きく欠けて驚くというケースも少なくありません。また、以前に治療した詰め物の下で再び虫歯が進行する「二次う蝕(二次カリエス)」も、詰め物と歯の境目から歯質がもろくなり、欠ける原因となります。虫歯による歯の欠損は、見た目の問題だけでなく、さらなる虫歯の進行や、歯の神経への感染、最終的には歯を失うことにも繋がります。定期的な歯科検診を受け、虫歯の早期発見・早期治療を心がけることが、歯が欠けるリスクを減らすためには非常に大切です。
虫歯が原因で歯が欠けるメカニズム