「歯がズキズキ痛むのと同時に、頭も痛くなってきた…」このような経験をされたことはありませんか?一見、歯と頭は離れた場所にあるように思えますが、実は密接に関連しており、歯の痛みが頭痛を引き起こすことは珍しくありません。そのメカニズムを理解することで、適切な対処法を見つける手助けになります。歯の痛みと頭痛が同時に起こる主な理由の一つは、「神経のつながり」です。歯の感覚を脳に伝える神経は「三叉神経(さんさしんけい)」と呼ばれ、顔面全体の感覚や咀嚼筋の運動などを司る非常に大きな神経です。この三叉神経は、上顎の歯、下顎の歯、そして顔の皮膚や筋肉、さらには頭部の一部にも枝分かれして分布しています。そのため、虫歯や歯周病などで歯やその周囲の組織に強い炎症や痛みが生じると、その刺激が三叉神経を通じて脳に伝わる過程で、関連痛として頭痛を引き起こすことがあるのです。特に、上の奥歯の痛みは、三叉神経の枝が近いため、側頭部やこめかみ辺りの頭痛として感じやすいと言われています。また、「筋肉の緊張」も頭痛の原因となり得ます。歯が痛いと、無意識のうちに痛む歯をかばって片側だけで噛んだり、痛みをこらえるために顔や首の筋肉が緊張したりします。この持続的な筋肉の緊張が、肩こりや首こりを引き起こし、それが「緊張型頭痛」と呼ばれる頭痛の原因となることがあります。緊張型頭痛は、頭全体が締め付けられるような、重苦しい痛みが特徴です。さらに、「炎症の波及」も考えられます。例えば、上の奥歯の根の先に膿が溜まる根尖性歯周炎が進行し、その炎症が上顎洞(鼻の横にある空洞)にまで及ぶと、「歯性上顎洞炎(しせいじょうがくどうえん)」を引き起こすことがあります。歯性上顎洞炎の症状の一つとして、頬の痛みや鼻詰まりとともに、頭痛が現れることがあります。このように、歯の痛みと頭痛は、神経の連絡、筋肉の緊張、炎症の波及といった様々なメカニズムを通じて関連し合っています。歯の痛みに加えて頭痛も感じる場合は、自己判断せずに歯科医院や医療機関を受診し、原因を特定してもらうことが大切です。