差し歯は、一度治療が完了したらそれで終わりというわけではありません。その機能を維持し、できるだけ長く快適に使用するためには、歯科医院での定期的なメンテナンスが不可欠です。なぜなら、差し歯の寿命は、日々のセルフケアだけではカバーしきれない様々な要因に左右されるからです。そして、これらの要因を専門家の目でチェックし、早期に対処することが、差し歯を長持ちさせるための鍵となるのです。まず、定期メンテナンスでは、差し歯そのものの状態を詳細に確認します。差し歯に欠けやヒビが入っていないか、摩耗の程度はどうか、変色や着色はないかなどをチェックします。また、差し歯と天然歯、あるいは差し歯と歯茎との間に隙間ができていないか、適合状態も確認します。これらの問題が初期の段階で発見されれば、簡単な調整や補修で済むこともありますが、放置すると差し歯の破損や脱離、さらには二次的な虫歯や歯周病の原因となる可能性があります。次に、差し歯を支えている土台の歯(歯根)や、周囲の歯茎の健康状態のチェックも非常に重要です。レントゲン撮影によって、土台の歯に虫歯ができていないか、歯の根の先に炎症(根尖病巣)が起きていないかなどを確認します。また、歯周ポケットの深さを測定し、歯周病が進行していないかをチェックします。もし、土台の歯に問題が見つかれば、早期に治療を開始することで、差し歯を失うリスクを減らすことができます。噛み合わせのチェックと調整も、定期メンテナンスの重要な項目です。時間の経過とともに、噛み合わせは微妙に変化することがあります。特定の差し歯に過度な力がかかり続けていると、差し歯が破損したり、土台の歯に負担がかかりすぎたりして、寿命を縮める原因となります。定期的に噛み合わせをチェックし、必要に応じて調整することで、バランスの取れた状態を維持し、差し歯にかかる負担を軽減することができます。そして、プロフェッショナルクリーニングも欠かせません。歯科衛生士が専門的な器具を使って、自分では落としきれない歯垢(プラーク)や歯石を徹底的に除去してくれます。特に、差し歯と歯茎の境目や、歯と歯の間は汚れが溜まりやすい場所です。これらの部分をきれいにすることで、虫歯や歯周病の予防に繋がり、結果として差し歯の寿命を延ばすことになります。
差し歯の寿命と定期メンテナンスの重要性