2025年6月
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歯の神経を抜くとは?根管治療の基本
「歯の神経を抜く」という言葉を聞くと、なんだか怖いイメージを持つ方も多いかもしれません。しかし、これは歯を保存するために行われる重要な歯科治療の一つで、専門的には「根管治療(こんかんちりょう)」あるいは「歯内療法(しないりょうほう)」と呼ばれます。では、具体的にどのような場合に歯の神経を抜く必要があり、どのような治療が行われるのでしょうか。歯の神経(歯髄:しずい)は、歯の内部にある空洞(歯髄腔)と歯の根の中の管(根管)を満たしている軟らかい組織で、神経線維や血管、リンパ管などが含まれています。歯髄は、歯に栄養を供給したり、温度や痛みといった刺激を感じ取ったりする役割を担っています。しかし、深い虫歯が進行して歯髄まで達したり、歯を強くぶつけて歯髄が大きなダメージを受けたりすると、歯髄は細菌に感染して炎症を起こしたり(歯髄炎)、壊死(死んでしまうこと)したりします。このような状態になると、激しい痛みが生じたり、歯の根の先に膿が溜まったりする可能性があります。歯の神経を抜く治療(根管治療)は、この感染したり壊死したりした歯髄を取り除き、根管内を徹底的に清掃・消毒し、再感染を防ぐために薬剤を緊密に充填する処置です。これにより、歯の痛みを和らげ、歯の根の先の病巣の進行を食い止め、最終的には歯を抜かずに済む可能性を高めることができます。つまり、歯の神経を抜くというのは、歯そのものを抜くのではなく、歯の内部にある問題のある組織を取り除くことで、歯の機能と寿命をできるだけ長く保つための治療なのです。治療には高度な技術と精密な作業が求められ、数回の通院が必要となることもあります。