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その口内炎、本当にうつらない?「うつる口内炎」と「うつらない口内炎」
「口内炎ができたから、キスはしないでね」。恋人同士の会話などで、こんなやり取りを耳にすることがあります。しかし、この心配は、本当に必要なのでしょうか。結論から言うと、口内炎には「うつるタイプ」と「うつらないタイプ」があり、私たちが最も頻繁に経験する、一般的な口内炎は、ほとんどが「うつらないタイプ」です。まず、「うつらない口内炎」の代表格が、「アフタ性口内炎」です。これは、口の中にできる、白く円形で、周りが赤い、最もポピュラーな口内炎です。その原因は、まだ完全には解明されていませんが、ストレスや疲労による免疫力の低下、ビタミン不足、あるいは、口の中を噛んでしまった時の傷などが、引き金になると考えられています。これは、体の中の問題や、物理的な刺激によって起こる「炎症」であり、原因となるウイルスや細菌が、他人へと感染するものではありません。したがって、アフタ性口内炎の人と、キスをしたり、食器や、グラスを共有したりしても、相手に口内炎がうつることは、全くありません。一方で、注意が必要なのが、「うつる口内炎」です。これは、特定の「ウイルス」や「細菌」への感染が原因で起こるものです。その代表が、「ウイルス性口内炎」です。例えば、「単純ヘルペスウイルス」によって引き起こされる「口唇ヘルペス」や「ヘルペス性口内炎」は、患部である水ぶくれや、ただれ(びらん)の中に、大量のウイルスが含まれています。そのため、キスや、タオル、食器の共有などを通じて、唾液や、接触によって、他人に感染する可能性があります。また、主に子供に多い、「手足口病」や「ヘルパンギーナ」といった、いわゆる夏風邪も、原因となるウイルスが、咳やくしゃみ(飛沫感染)、あるいは、便から排出されて(経口感染)、うつることがあります。その他、稀なケースとして、「梅毒」や「淋病」といった性感染症が、口の中に症状として現れることもあります。このように、口内炎と一括りに言っても、その原因によって、感染のリスクは、全く異なります。自分の口内炎が、ただの白い円形のものではなく、水ぶくれを伴っていたり、発熱などの全身症状があったりする場合は、それは「うつるタイプ」の可能性を考え、感染を広げないための配慮が必要になります。