特定の歯に虫歯や歯周病などの明らかな問題が見当たらないにもかかわらず、噛むと奥歯が痛む。そんな不可解な痛みに悩まされているなら、原因はあなた自身の無意識の癖、つまり「食いしばり」や「歯ぎしり」にあるかもしれません。これらは専門的にはブラキシズムと呼ばれ、特に睡眠中など、自分では気づかないうちに行っていることがほとんどです。人間の噛む力は非常に強く、食事の際には数十キロの力がかかると言われています。しかし、睡眠中の食いしばりや歯ぎしりでは、それをはるかに上回る、時に百キロ以上の力が持続的に歯や顎にかかるとされています。通常、上下の歯は会話や食事の時以外は接触しておらず、数ミリの隙間が空いているのが正常な状態です。しかし、食いしばりの癖があると、この休息時間がなくなり、常に奥歯に過剰な負荷がかかり続けることになります。その結果、歯そのものや、歯と骨をつなぐ歯根膜がダメージを受け、炎症を起こしてしまうのです。これが、噛んだ時の痛みの正体です。まるで重労働で筋肉痛が起こるように、歯も過労状態に陥ってしまうのです。このタイプの痛みは、朝起きた時に特に強く感じることが多く、顎のだるさや頭痛、肩こりを伴うこともあります。ストレスや疲労が溜まっている時、あるいは何かに集中している時に、日中でも無意識に歯を食いしばっている人も少なくありません。もし、頬の内側に白い線(圧痕)がある、舌の縁がギザギザしている、歯の先端がすり減っているといったサインがあれば、食いしばりをしている可能性が高いでしょう。対策としては、歯科医院で自分専用のマウスピース(ナイトガード)を作製し、就寝中に装着することで、歯にかかる力を分散させる方法が一般的です。また、日中は意識的に上下の歯を離すように心がけたり、ストレスを溜めない生活を送ったりすることも、症状の緩和につながります。
無意識の食いしばりが奥歯の痛みを招く