歯の根元や歯と歯茎の間に黒い歯石を見つけると、見た目も気になりますし、「自分で取れないかな?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。爪楊枝や硬い歯ブラシでこすってみたり、市販の歯石取り器具を使ってみようかと考えることもあるでしょう。しかし、結論から言うと、黒い歯石を自分で取ることは非常に危険であり、絶対に避けるべきです。その理由と、正しい対処法について説明します。まず、黒い歯石(歯肉縁下歯石)がなぜ自分で取ってはいけないのか、その危険性についてです。黒い歯石は、歯周ポケットの奥深く、歯の根の表面に非常に硬く、強固に付着しています。これを無理やり自分で取ろうとすると、以下のようなリスクが伴います。第一に、歯茎を傷つけてしまう可能性が非常に高いです。歯周ポケット内の歯茎は非常にデリケートであり、鋭利な器具や不適切な力加減で触れると、簡単に出血したり、炎症を悪化させたりします。第二に、歯の表面(特にセメント質や象牙質といった根の部分)を傷つけてしまう恐れがあります。歯の表面に不必要な傷がつくと、そこが新たな細菌の温床になったり、知覚過敏の原因になったりすることがあります。第三に、歯石を完全に取り除くことができず、かえって中途半端に残してしまう可能性が高いです。目に見える部分だけを取ったつもりでも、歯周ポケットの奥深くにはまだ多くの歯石が残っていることがほとんどです。そして、この残った歯石がさらに細菌の繁殖を助長し、歯周病を悪化させることになりかねません。第四に、使用する器具が不衛生であった場合、口腔内に新たな細菌を持ち込み、感染を引き起こすリスクもあります。では、黒い歯石を見つけたらどうすれば良いのでしょうか。正しい対処法は、ただ一つ、「歯科医院を受診し、専門家である歯科医師や歯科衛生士に取ってもらう」ことです。歯科医院では、専門的な知識と技術を持ったスタッフが、専用の器具(スケーラーや超音波スケーラーなど)を使用して、安全かつ確実に歯石を除去してくれます。特に黒い歯石は歯肉縁下に隠れているため、歯周ポケットの深さを測定したり、レントゲンで確認したりしながら、慎重に除去作業が行われます。