口の中にできた、なかなか治らない口内炎や、しこり、ただれ。それが、実は「性感染症(STD)」の一つの症状である、という可能性を、考えたことはありますか。性感染症は、性器だけでなく、オーラルセックスなどの行為によって、口の中の粘膜に感染し、様々な病変を引き起こすことがあります。そして、これらの病変は、当然、感染力があり、キスなどによって、さらに他の人へとうつる可能性があるのです。口の中に症状が現れる、代表的な性感染症には、いくつかあります。まず、「梅毒」です。梅毒トレポネーマという細菌への感染によって起こります。感染後、約3週間で、感染した部位(唇、舌、喉など)に、「初期硬結」と呼ばれる、軟骨のような硬いしこりができます。やがて、その中心部が、ただれて潰瘍になりますが、痛みはほとんどないのが特徴です。この時期の病変部には、大量の病原体が含まれており、非常に感染力が強いです。次に、「淋病」です。淋菌への感染によって、喉に感染した場合、「淋菌性咽頭炎」を引き起こします。喉の痛みや、腫れが主な症状ですが、見た目には、風邪との区別がつきにくいこともあります。また、口の中の粘膜に、口内炎のような、ただれができることもあります。そして、「性器クラミジア感染症」の原因である、クラミジア・トラコマティスも、喉に感染することがあります。これも、多くは、無症状か、軽い喉の痛み程度ですが、オーラルセックスによる、ピンポン感染の原因となります。さらに、忘れてはならないのが、「口腔カンジダ症」です。カンジダは、性感染症ではありませんが、性的接触によっても感染することがあります。また、HIV感染症(エイズ)など、免疫力が著しく低下した状態では、日和見感染として、口腔カンジダ症が、非常に発症しやすくなります。もし、口の中に、原因不明の、痛みのないしこりや、ただれが、長期間続いている場合、そして、不特定多数との性的接触など、感染のリスクに心当たりがある場合は、躊躇せず、専門の医療機関を受診してください。診療科は、「泌尿器科」、「婦人科」、あるいは「性感染症内科」となります。正しい診断と、適切な抗菌薬による治療を受けることが、あなた自身の健康と、大切なパートナーを守るために、不可欠です。