歯がグラグラと揺れる場合、その原因によって歯科医院で行われる治療法は大きく異なります。歯科医師は、まず問診、視診、レントゲン検査、歯周ポケット検査などを行い、歯がグラグラする原因を正確に診断します。その診断結果に基づいて、以下のような治療法が検討されます。原因が「歯周病」である場合、まず歯周基本治療が行われます。これには、歯科衛生士による歯石除去(スケーリング)や、歯の根の表面を滑らかにするルートプレーニング、そして患者さん自身による正しい歯磨き(プラークコントロール)の徹底が含まれます。歯周病が進行している場合は、歯周外科手術(フラップ手術など)を行い、歯周ポケットの奥深くの汚れを取り除いたり、失われた歯周組織の再生を促す再生療法が行われたりすることもあります。歯のグラグラが著しい場合は、一時的に隣の歯と固定する「暫間固定(ざんかんこてい)」を行うこともあります。原因が「噛み合わせの異常や歯ぎしり・食いしばり」である場合、まず噛み合わせの調整が行われます。特定の歯に強く当たっている部分をわずかに削るなどして、全体の噛み合わせのバランスを整えます。歯ぎしりや食いしばりに対しては、就寝中に装着するマウスピース(ナイトガード)を作成し、歯や歯周組織にかかる負担を軽減します。原因が「歯の根の先の病気(根尖性歯周炎)」である場合、歯の神経を抜く治療(根管治療)が行われます。感染した歯髄組織や細菌を取り除き、根管内を徹底的に清掃・消毒し、薬剤を充填することで、歯の根の先の炎症を鎮めます。根管治療が成功すれば、歯のグラグラも徐々に改善していくことが期待できます。根管治療だけでは治癒が難しい場合は、歯根端切除術という外科的な処置が行われることもあります。原因が「外傷」である場合、歯の位置がずれていれば元の位置に戻し(整復)、隣の歯とワイヤーや接着剤で一時的に固定する処置が行われます。固定期間は、損傷の程度によって異なりますが、数週間から数ヶ月程度が目安です。歯の神経がダメージを受けている場合は、後日、根管治療が必要になることもあります。残念ながら、これらの治療を行っても歯の保存が難しいと判断された場合は、抜歯が選択されることもあります。抜歯後は、ブリッジ、入れ歯、インプラントなどの方法で失われた歯の機能を回復する治療が必要になります。