歯周病は、日本人の成人の約8割がかかっていると言われる国民病であり、進行すると歯を支える骨が溶け、最終的には歯が抜け落ちてしまう恐ろしい病気です。この歯周病の最大の原因は、歯と歯の間や歯周ポケット(歯と歯茎の間の溝)に潜むプラーク(歯垢)です。歯ブラシだけでは落としきれないこれらのプラークを効果的に除去するために、デンタルフロスの使用が非常に重要になります。特に歯周病予防を意識する場合、どのようなフロスを選び、どう使えば良いのでしょうか。歯周病が気になる方や、すでに歯周病と診断されている方におすすめのフロスは、まず「エキスパンドタイプ(膨らむフロス)」です。このタイプのフロスは、唾液や水分を含むとスポンジのようにフワッと膨らみ、歯の側面や歯周ポケットに優しくフィットして、効率的にプラークを絡め取ることができます。通常のフロスよりも歯茎への刺激が少ないため、炎症を起こしている歯茎にも比較的使いやすいのが特徴です。歯間が広い部分や、歯茎が下がって歯の根が露出している部分の清掃にも適しています。次に、フロスの材質としては、「PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製」のフロスも選択肢の一つです。PTFEは、テフロン加工のフライパンなどにも使われている素材で、非常に滑らかで切れにくいという特徴があります。そのため、歯間が狭い方や、詰め物や被せ物が多くてフロスが引っかかりやすい方でも、スムーズに挿入しやすく、フロスが途中で切れてしまうストレスを軽減できます。プラーク除去効果も高いとされています。また、歯周病の方は、歯周ポケットが深くなっていることが多いです。フロスを歯周ポケットの奥まで無理に挿入するのは避けるべきですが、歯茎の縁に沿って丁寧にフロスを通すことで、ポケットの入り口付近のプラークを除去することができます。この際、力を入れすぎると歯茎を傷つけてしまうため、優しく操作することが重要です。ホルダータイプのフロスも、奥歯の歯周ポケット周辺の清掃には便利ですが、歯周ポケットが深い場合は、糸巻きタイプのフロスで指先の感覚を頼りに丁寧に清掃する方が効果的な場合もあります。フロスを選ぶ際には、自分の歯茎の状態(炎症の有無、歯周ポケットの深さなど)や、歯間の広さ、操作のしやすさなどを考慮することが大切です。