虫歯や事故などで歯を失ったり、大きく欠けたりした場合に用いられる差し歯。見た目を回復し、噛む機能を補うために非常に重要な治療法ですが、この差し歯にも寿命があることをご存知でしょうか。差し歯がどれくらい持つのか、その平均的な寿命と、寿命に影響を与える様々な要因について理解しておくことは、差し歯を長持ちさせ、快適な口腔内環境を維持するために非常に大切です。一般的に、差し歯の平均的な寿命は、保険適用のものと自費診療のもので、また使用される素材によっても異なりますが、おおよそ7年から10年程度と言われています。しかし、これはあくまで平均的な目安であり、実際にはこれより短くなることもあれば、適切なケアと定期的なメンテナンスによって15年以上、あるいはそれ以上長持ちするケースも少なくありません。では、差し歯の寿命に影響を与える主な要因にはどのようなものがあるのでしょうか。まず、最も大きな影響を与えるのは、差し歯の土台となるご自身の歯(歯根)の状態です。差し歯は、歯根に金属やグラスファイバーなどで作られた土台(コア)を立て、その上に被せ物(クラウン)を装着する構造になっています。この土台となる歯根が虫歯になったり、歯周病によってグラグラになったりすると、差し歯そのものがどんなに良いものであっても、支えを失ってしまい、寿命を迎えることになります。次に、差し歯の素材も寿命に関わってきます。保険適用の差し歯でよく用いられるレジン(プラスチック)は、比較的安価ですが、吸水性があり変色しやすく、強度もセラミックなどに比べると劣るため、摩耗したり欠けたりしやすい傾向があります。一方、自費診療のセラミック製の差し歯は、天然歯に近い色調と透明感を持ち、変色しにくく、強度も高いですが、強い衝撃で割れる可能性もあります。金属製のものは丈夫ですが、見た目の問題や金属アレルギーのリスクがあります。また、噛み合わせのバランスも重要な要素です。特定の差し歯に過度な力がかかり続けると、差し歯が破損したり、土台となる歯根に負担がかかりすぎて寿命を縮めたりすることがあります。歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合も同様です。そして、何よりも大切なのが、日々の口腔ケアと定期的な歯科医院でのメンテナンスです。