歯と歯のあいだ(歯間部)は、お口の中で最も虫歯になりやすい場所の一つと言われています。その理由は、この部分が持ついくつかの構造的な特徴と、日常のケアの難しさにあります。まず、最大の理由は「歯ブラシの毛先が届きにくい」ことです。歯と歯が隣り合って接している部分は非常に狭く、通常の歯ブラシだけでは、その隙間に潜む食べカスやプラーク(歯垢)を完全に取り除くことは困難です。特に、奥歯の歯間部は、さらに清掃が難しくなります。次に、「唾液による自浄作用が働きにくい」ことも原因の一つです。唾液には、食べカスを洗い流したり、虫歯菌が出す酸を中和したり、歯の再石灰化を促したりする重要な役割があります。しかし、歯と歯のあいだのような狭い空間には唾液が十分に行き渡りにくく、自浄作用が効果的に働きません。その結果、プラークが長時間滞留しやすくなり、虫歯菌が繁殖しやすい環境が作られてしまうのです。また、「食べ物が挟まりやすい」という点も無視できません。繊維質の野菜や肉などが歯と歯のあいだに挟まると、それがプラークの温床となり、虫歯のリスクを高めます。特に、歯並びが悪い場合や、不適合な詰め物・被せ物がある場合は、より食べ物が挟まりやすくなります。「コンタクトポイントの存在」も関係しています。歯と歯が接している部分をコンタクトポイントと呼びますが、この接触点のすぐ下は、唾液の流れが悪く、プラークが停滞しやすいデッドスペースとなりがちです。この部分から虫歯が発生し、徐々に内部へと進行していくケースが多く見られます。さらに、歯と歯のあいだの虫歯は、「発見が遅れやすい」という特徴も、結果的に虫歯になりやすい(進行しやすい)要因となっています。初期の段階では見た目の変化がほとんどなく、自覚症状も乏しいため、気づかないうちに進行してしまうのです。これらの理由から、歯と歯のあいだは虫歯にとって非常に好都合な場所と言えます。このリスクを理解し、デンタルフロスや歯間ブラシを用いた適切な歯間清掃を毎日の習慣にすることが、歯と歯のあいだの虫歯を予防するためには不可欠です。