子供の乳歯が、一般的な時期よりも早く抜けてしまうと、「何か問題があるのでは?」「将来の歯並びに影響しないかな?」と心配になる親御さんもいらっしゃるでしょう。確かに、乳歯が適切な時期よりも早くに脱落してしまうと、いくつかの問題が生じる可能性があります。乳歯には、永久歯が正しい位置に生えてくるためのスペースを確保するという重要な役割があります。もし、虫歯や外傷などによって乳歯が早期に失われてしまうと、その空いたスペースに隣の歯が倒れ込んできたり、後ろの歯が前方に移動してきたりすることがあります。その結果、後から生えてくる永久歯の萌出スペースが不足し、永久歯が正しい位置に生えることができず、叢生(歯がガタガタに並ぶこと)や八重歯、あるいは埋伏歯(歯が骨の中に埋まったまま出てこないこと)の原因となることがあります。特に、奥歯の乳歯(乳臼歯)を早期に失った場合の影響は大きいです。乳臼歯は、永久歯の小臼歯が生えてくるまでの間、噛む機能を維持するだけでなく、後方から生えてくる最初の永久歯である第一大臼歯(6歳臼歯)が正しい位置に萌出するためのガイドの役割も果たしています。もし、乳臼歯が早く抜けてしまうと、第一大臼歯が前方に傾斜して萌出してしまい、その結果、小臼歯や犬歯が生えるためのスペースが著しく不足してしまうことがあります。また、乳歯が抜ける順番が通常と大きく異なる場合も注意が必要です。例えば、先に抜けるべき歯が残っていて、後から抜けるはずの歯が先に抜けてしまうと、歯列全体のバランスが崩れ、永久歯の萌出順序にも影響を与え、歯並びの乱れを引き起こすことがあります。乳歯が早く抜けてしまった場合に、必ずしも問題が生じるわけではありません。永久歯の萌出が近ければ、それほど大きな影響がないこともあります。しかし、永久歯の萌出までまだ時間がある場合や、特に奥歯を早期に失った場合は、歯科医師に相談し、必要に応じて「保隙装置(ほげきそうち)」という、スペースを確保するための装置を使用することを検討する必要があります。保隙装置は、失われた乳歯の代わりにスペースを維持し、隣の歯が倒れ込んでくるのを防ぐ役割をします。これにより、後から生えてくる永久歯が正しい位置に萌出するのを助けることができます。