子供の乳歯が抜け始める時、多くの親御さんが「どの歯から抜けるのかな?」と気になることでしょう。一般的に、乳歯の生え変わりは下の歯から始まることが多いと言われています。特に、下の前歯(乳中切歯)が最初にグラグラし始め、ポロッと抜けるという経験をする子供が多いようです。では、なぜ下の歯から先に抜ける傾向があるのでしょうか。この乳歯の脱落順序には、実は永久歯の準備状況が深く関わっています。乳歯の下には、次に生えてくる永久歯がスタンバイしており、永久歯が成長して乳歯の根を吸収することで、乳歯はグラグラになり、やがて抜け落ちるのです。この永久歯の準備が、下の前歯(永久中切歯)で比較的早く進むため、結果として下の乳中切歯が最初に抜けることが多いと考えられています。具体的には、永久歯の歯胚(歯の卵のようなもの)が顎の骨の中で成長し、歯冠(歯の頭の部分)が完成すると、次に歯根が作られ始めます。この歯根が伸びてくる力と、永久歯が萌出しようとする力によって、乳歯の歯根が徐々に溶かされていくのです(これを歯根吸収と呼びます)。下の永久中切歯は、他の永久歯に比べて比較的早い時期にこの歯根吸収を開始し、乳歯を押し出す準備が整うため、乳歯の脱落も早くなる傾向があるのです。下の乳中切歯が抜けた後は、多くの場合、上の乳中切歯が次に抜けます。そして、下の乳側切歯、上の乳側切歯と続くのが一般的なパターンです。このように、基本的には「下→上」の順で、そして「前から奥へ」と進んでいく傾向が見られます。しかし、これはあくまで一般的な傾向であり、必ずしも全ての子供がこの通りに進むわけではありません。中には、上の歯から先に抜け始めたり、左右で抜けるタイミングが大きく異なったりすることもあります。また、稀に、前歯よりも先に奥歯(第一乳臼歯)がグラグラし始めるケースも見られます。乳歯の抜ける順番や時期には個人差が大きく、半年から1年程度のずれは特に心配する必要はないとされています。