子供の歯(乳歯)が欠けてしまうと、親御さんは「永久歯に影響はないだろうか」「何か悪いことが起きているのでは」と心配になることでしょう。乳歯が欠ける原因はいくつかあり、その原因や欠け方によっては、後に生えてくる永久歯に影響を及ぼす可能性も考慮する必要があります。乳歯が欠ける主な原因としては、まず「虫歯」が挙げられます。乳歯は永久歯に比べてエナメル質が薄く柔らかいため、虫歯になりやすく、進行も早いという特徴があります。虫歯が進行すると、歯質がもろくなり、食事中などに簡単に欠けてしまうことがあります。特に、奥歯の溝や歯と歯の間、前歯の裏側などは虫歯になりやすい場所です。次に、「外傷」も乳歯が欠ける大きな原因です。子供は活発に動き回るため、転んだり、物にぶつかったりして歯を強打することがよくあります。その衝撃で、乳歯が欠けたり、折れたり、場合によっては抜け落ちてしまうこともあります。特に、1歳半から3歳頃の、歩き始めでまだ足元が不安定な時期に多く見られます。「エナメル質形成不全」という、歯の表面のエナメル質が生まれつきうまく作られなかった状態も、乳歯が欠けやすい原因の一つです。エナメル質形成不全の歯は、通常の歯よりもエナメル質が薄かったり、もろかったりするため、わずかな力でも欠けてしまうことがあります。乳歯が欠けた場合、それが永久歯にどのような影響を与えるかは、欠けた原因や時期、範囲、そしてその後の処置によって異なります。例えば、虫歯が原因で乳歯が早期に失われてしまうと、隣の歯が倒れ込んできたり、後ろの歯が前にずれてきたりして、永久歯が生えてくるためのスペースが不足し、歯並びが悪くなる原因となることがあります。また、乳歯の根の先に膿が溜まるような状態(根尖病巣)を長期間放置すると、その下にある永久歯の形成に悪影響を及ぼし、永久歯の色や形に異常が生じたり、生えてくる方向がずれたりする可能性も指摘されています。外傷によって乳歯が強く押し込まれたり(陥入)、位置がずれたりした場合も、永久歯の歯胚(歯の芽)にダメージを与え、影響が出ることがあります。子供の乳歯が欠けた場合は、自己判断せずに、できるだけ早く小児歯科や一般歯科を受診し、適切な診断と処置を受けることが非常に重要です。