歯の根の先に膿が溜まり、ズキズキとした強い痛みや歯茎の腫れに襲われたとき、「自然に膿が出てくれれば楽になるのに…」と思うことがあるかもしれません。実際に、根尖性歯周炎が進行すると、歯茎に「瘻孔(ろうこう)」と呼ばれる膿の出口ができ、そこから自然に膿が排出されることがあります。しかし、これは根本的な解決にはならず、放置すれば症状が悪化する可能性があるため、適切な応急処置と早期の歯科受診が不可欠です。まず、歯茎から自然に膿が出ている場合、それは体が何とかして内圧を下げようとしているサインです。膿が出ることで一時的に痛みが和らぐこともありますが、感染の原因である歯の根の中の細菌が取り除かれたわけではありません。そのため、膿の排出は断続的に続き、炎症は慢性化していきます。自己判断で瘻孔を針などで突いたり、無理に膿を絞り出そうとしたりするのは絶対にやめましょう。かえって細菌感染を広げたり、周囲の組織を傷つけたりする危険性があります。では、根管治療を受ける前に、自宅でできる応急処置にはどのようなものがあるでしょうか。痛みが強い場合は、市販の痛み止め(鎮痛剤)を服用することで、一時的に症状を緩和できます。ただし、用法・用量を守り、アレルギーなどがないか確認してください。患部を冷やすのも効果的です。濡れタオルや冷却シート、氷嚢などを頬の外側から当てることで、炎症を抑え、痛みを和らげることができます。ただし、直接氷を口に含んだり、冷やしすぎたりするのは避けましょう。口腔内を清潔に保つことも重要です。ぬるま湯で優しくうがいをしたり、刺激の少ないうがい薬を使用したりして、細菌の増殖を抑えましょう。ただし、歯ブラシで無理に患部をゴシゴシ磨くのは避けてください。食事は、硬いものや刺激物を避け、柔らかく消化の良いものを選びましょう。十分な睡眠と休息を取り、体を休めることも、免疫力を高め、症状の悪化を防ぐのに役立ちます。これらの応急処置は、あくまで一時的な症状緩和のためのものであり、根本的な治療ではありません。最も重要なのは、できるだけ早く歯科医院を受診し、専門家による診断と適切な根管治療を受けることです。
自然に膿が出る?根管治療前の応急処置