歯の神経を抜く治療(根管治療)を受けた歯は、その後どのくらい長持ちするのでしょうか。神経を抜いた歯の寿命や予後(治療後の経過)は、様々な要因によって左右されます。適切に治療され、その後のケアが良好であれば、長期間にわたって機能し続けることが期待できます。まず、神経を抜いた歯の寿命に影響を与える最も大きな要因の一つは、「根管治療の質」です。根管治療は非常に精密で複雑な治療であり、感染した歯髄組織を完全に取り除き、根管内を徹底的に清掃・消毒し、隙間なく薬剤を充填することが求められます。この治療が不十分であったり、根管内に細菌が残っていたりすると、後になって再感染を起こし、歯の根の先に病巣ができたり、痛みが再発したりする可能性があります。再治療が必要になると、歯の寿命は短くなる傾向があります。次に、「治療後の被せ物(クラウン)の状態」も重要です。神経を抜いた歯はもろくなりやすいため、多くの場合、歯全体を覆うクラウンで補強する必要があります。このクラウンが歯にしっかりと適合しており、噛み合わせのバランスが取れていることが、歯の破折を防ぎ、寿命を延ばすためには不可欠です。クラウンの材質や精度、装着後のメンテナンスも影響します。「患者さん自身の口腔ケアの状態」も予後に大きく関わります。神経を抜いた歯は痛みを感じにくくなるため、虫歯が再発しても気づきにくいことがあります。毎日の丁寧な歯磨きやデンタルフロスの使用を怠ると、クラウンと歯の境目などから虫歯が進行し、歯の寿命を縮めてしまう可能性があります。「定期的な歯科検診とメンテナンス」も欠かせません。歯科医院で定期的に治療した歯の状態をチェックしてもらい、レントゲン検査で根の先の病巣の再発がないかなどを確認することが大切です。また、専門的なクリーニングを受けることで、虫歯や歯周病のリスクを低減できます。一般的に、適切に根管治療が行われ、その後のケアが良好であれば、神経を抜いた歯でも10年、20年、あるいはそれ以上機能し続けることは十分に可能です。しかし、何らかのトラブルが生じた場合は、早めに対処することが、歯の寿命を最大限に延ばすためには重要です。
神経を抜いた歯の寿命と予後