親知らず(第三大臼歯)のトラブルも、歯の痛みとともに頭痛を引き起こす一般的な原因の一つです。親知らずは、最も奥に生えてくる歯であり、多くの場合、十分なスペースがないために、まっすぐに生えてこなかったり、一部が歯ぐきに埋まったままだったり(埋伏歯)、横向きに生えてきたり(水平埋伏歯)することがあります。このような親知らずは、様々な問題を引き起こしやすく、それが頭痛に繋がることがあるのです。まず、親知らずの周囲の歯ぐきが炎症を起こす「智歯周囲炎(ちししゅういえん)」は、強い痛みと腫れを伴うことが多く、この炎症が三叉神経を刺激して頭痛を引き起こすことがあります。智歯周囲炎は、親知らずが完全に生えきらず、歯と歯ぐきの間に隙間ができることで、そこに食べカスや細菌が溜まりやすくなるために起こります。炎症がひどくなると、口が開きにくくなったり、飲み込む時に痛みを感じたりすることもあります。また、親知らずが手前の歯(第二大臼歯)を押すようにして生えてこようとすると、手前の歯に圧力がかかり、歯の痛みや違和感、そしてそれが頭痛として感じられることがあります。特に、水平埋伏歯の場合、手前の歯の根を吸収してしまったり、手前の歯の後ろ側に虫歯を作ってしまったりするリスクもあります。親知らず自体が虫歯になったり、歯髄炎を起こしたりした場合も、強い歯の痛みとともに頭痛が生じることがあります。親知らずは最も奥にあるため歯ブラシが届きにくく、清掃が不十分になりやすいため、虫歯になりやすい歯の一つです。さらに、親知らずの噛み合わせが悪い場合や、上下の親知らずがうまく噛み合っていない場合、顎関節に負担がかかり、顎関節症を引き起こすことがあります。顎関節症の症状の一つとして、顎の痛みや口の開けにくさとともに、頭痛が現れることがあります。親知らずに関連する歯の痛みや腫れ、そして頭痛がある場合は、我慢せずに歯科医院を受診しましょう。レントゲン検査などで親知らずの状態を確認し、必要であれば抜歯などの適切な処置を受けることで、これらの不快な症状から解放されることが期待できます。