歯ぎしりや食いしばりは、放置すると歯や顎、全身に様々な悪影響を及ぼす可能性があるため、歯科医院で適切な診断と治療を受けることが重要です。歯科医院では、歯ぎしりの原因や症状の程度に応じて、いくつかの治療法が選択されます。最も一般的な治療法の一つが、「マウスピース(ナイトガード、スプリントとも呼ばれる)療法」です。これは、患者さん一人ひとりの歯型に合わせて作製した透明な樹脂製のマウスピースを、主に就寝中に装着する方法です。マウスピースを装着することで、上下の歯が直接こすり合わさるのを防ぎ、歯や歯周組織、顎関節にかかる負担を軽減する効果があります。また、歯ぎしりによる音の発生を抑える効果も期待できます。マウスピースは、歯ぎしりそのものを根本的に治すものではありませんが、歯や顎へのダメージを最小限に抑えるための有効な対症療法です。次に、「噛み合わせの調整(咬合調整)」が行われることもあります。特定の歯だけが強く当たっていたり、不適合な詰め物や被せ物があったりすると、それが刺激となって歯ぎしりを誘発することがあります。歯科医師が噛み合わせの状態を精密に検査し、必要に応じて歯をわずかに削ったり、詰め物や被せ物を調整したりすることで、全体の噛み合わせのバランスを整え、歯ぎしりの原因を取り除くことを目指します。また、「薬物療法」が検討されることも稀にあります。歯ぎしりによる筋肉の緊張が非常に強い場合や、顎関節の痛みがひどい場合には、筋弛緩薬や消炎鎮痛薬が一時的に処方されることがあります。ただし、これはあくまで症状を緩和するための対症療法であり、長期的な使用は推奨されません。さらに、ストレスが大きな原因となっている場合には、「カウンセリング」や「認知行動療法」といった心理的なアプローチが有効なこともあります。歯科医師が、ストレスとの関連性を指摘し、必要であれば心療内科や専門のカウンセラーを紹介することもあります。重度の歯ぎしりや、それに伴う顎関節症の症状が深刻な場合には、より専門的な治療が必要となることもあります。歯ぎしりに悩んでいる方は、自己判断せずに、まずは歯科医師に相談し、自分に合った治療法を見つけることが大切です。
歯ぎしりの歯科医院での治療法